人形制作会議(第3回)
参加メンバー
8名。
1号
さて、今回は、ワイヤー骨格のメリットについて、だったな。
2号
そのまえに、5号から何か要求があるみたい。
5号 うさぎ
え? なんだっけ?
6号 アリス
ほら、あれ。出番が少ないとか、1号だけがしゃべってるとか、司会者をやらせろとか。
5号 うさぎ
あーそうだ。あれか。えっとさー、なんかさー、1号だけがしゃべってるんだよねー。司会者のくせに。だから、なんていうかさー、おかしくない?
3号
「人形制作会議」と銘打ってからそんな感じだね。まあ、人形制作をしているのは1号だから1号が中心になるのはしょうがないけど、毎回6名でやるのも、それぞれの発言の機会を狭めている原因じゃないかな?
1号
おっけおっけ。自分でもうすうす勘づいてはいた。バランスが悪いと。だからそういうことなら、今回からちょっと試しに、4号、5号、6号には画《え》づくりのほうに回ってもらおう。前回、前々回と4号がやっていたことだ。それなら5号も目立って満足だろ? それにやっぱり、映像は人を惹きつけるからな、大事な役割だ。
5号 うさぎ
あー4号がやってたみたいなこと? まあそれならいいかな。司会者やってもよかったけど。
6号 アリス
私はこっちでいいよ。目立たなくていいし。
1号
マジか。まあ、そうだな。今度はそっち側が飽和状態になるかもしれないからな。ま、どっちみち、しばらく様子を見てからまた判断しよう。
では4号。予定変更。5号を連れていって、22号の代わりに5号と19号との画像を撮ってこっちに送ってくれ。
4号
わかった。
1号
それでは再開する。一枚目に予定していた画像は、最初に貼っておこう。いきなり文字ばかりだとつまらないだろうから。で、二枚目は、これ。まずはこれを見て感想を述べてくれ。
6号 アリス
まだちょっと待ってーって叫んでるよ。
1号
来たか。おっけ。
2号
えー……っと、とくに変わったようなところはないけど?
3号
ん、まあ、ふつうだね。
1号
ふつうに見えるのなら、シメノンドールの前途は明るい!
なぜなら、たとえば、ぬいぐるみなら骨格がないので、ああはならないし、もし骨格が入っているようなものがあったとしたら、肩関節や股関節もがっちり固定されているので、そうだね、さしずめ、マネキンみたいになっていただろう。
2号
マネキン? どういうこと?
1号
そのままの意味だよ。硬いんだ。遊びというか、ゆるみ、たわみがないので、ある意味、死後硬直した人間と抱き合っているようなものだ。
2号
死後硬直した人間と抱き合ったことあるの?
3号
うん、その例えはひどいね。
1号
あ、いや、悪意はないんだけど、なんとなく感覚的にわかるだろ、みたいな。じゃ、6号、次の画像を送るように合図して。
6号 アリス
いいけど、私、伝達係?
1号
おんぶや肩車の時でも、肩関節や股関節がゆるいほうがいい。そのほうが自然だ。
3号
ああ、そういうこと。シメノンドールは肩関節、股関節は固定できないけど、そっちのほうが自然だっていう、主張? 発見?
2号
まわりくどい。
1号
ほら、あと、ワイヤーだからそれなりに弾力があってしなるし、脚を回して、足先をくの字にして引っ掛けて、ホールドすることもできる。このホールド感は、まさに人間のそれと同じだ。
2号
それは最低。
3号
これはひどい。
6号 アリス
え? なにが?
2号
だいしゅきーと言われながら正面からホールドしてもらいたい1号の欲望の表れだから。
1号
——おい。いや、待て待て。それは大いなる誤解だ。偶然、そう、結果的にそうなったということだ。ただのワイヤー骨格のメリットの一つである!
まとめ
ワイヤー骨格は素晴らしい。しかし難点をあげれば、いずれ経年劣化して折れてしまうこと。そのマイナスを補うために、シメノンドールではオーナー自らが交換できるように本体はファスナー付きで、中の綿を取り出してから、ワイヤーを簡単に取り外すことができるようになっている。