人形制作会議(第2回)
参加メンバー
8名。
1号
では今回は、人形の骨格について、語っていこう。えー、シメノンドールは、腕、脚、そして首に、ステンレスのワイヤーが入っていて、人間らしいポーズが可能である。
2号
手足の指にもでしょ?
1号
あ、そうだ。すっかり忘れてた。そうそう。あ、でもちょっと話を進める前に、まず4号、画像を——
4号
こないだの続きのやつ?
3号
22号だね?
5号 うさぎ
白いのは25号だよ。私の子分。
6号 アリス
え? そうなの?
1号
見てわかるように、シメノンドールは、肘関節および膝関節の固定はできる。が、肩関節や股関節の固定ができない。そのため、たとえば、腕を上げっぱなしにしたポーズとかはできない。
2号
それって重要なことなの?
3号
重要というか、可動式の人形のイメージとしては、関節の固定を利用してのポージングが一般的だからね。
4号
何かをつかんでたりしたら上げてられる。
5号 うさぎ
私も鉄棒得意だよ。コウモリとかもできるし。
1号
うむ。コウモリができるというのは、逆さになってもウイッグが落ちてこないという主張である。しかし、手で何かを摑んでられるというのは、指にも骨格があって、握力があるということである。キリッ。
2号
なに? キリッて。ドヤ顔?
3号
ワイヤーの太さは? 企業秘密?
1号
いや、とくに。指のワイヤーは#18だったかな。でも指先部分がUの字になるよう二本一組みたいな感じ。腕や首は#12。脚は#10。ああ、ワイヤーはステンレスね。
ステンレスは値段が高いけど錆びないからいつまでもきれいなままなんだ。最初のころ、安いステンレスじゃないやつを使ってたら、周辺の綿まで黒く変色していてびっくりしたよ。
4号
このあいだ、22号のは変更したと言ってた。
1号
あー! そうだ! そうだよ、そう。今回はそれを言うつもりだったんだ。サイズを変えたってことをね。
5号 うさぎ
なんか忘れてばっかりで、ボケすぎじゃない?
6号 アリス
わざとらしいし。
1号
おい。——って、ま、いい。時間がないので話を進めよう。とにかく、そうだ、22号の折れた腕のステンレスワイヤーを、うっかりして、#12ではなく#10で取り替えてしまったんだよ、あんとき。
ワイヤーは番号が低いほど太くなるからね、いやーほんと、驚くくらい硬かったんだけど、古くてワイヤーが硬くなったのか、それとも自分の握力が落ちてしまったせいかな、くらいに思ってたんだ。
3号
それはいつもの冗談ではなく?
1号
うん。ほんとほんと。じつはいったんカバーを着せて抱き心地を確かめていて、しばらくして、ようやく気づいたんだ。片方の肘関節だけ固すぎるから。
——そしてそこで考えた! もしやこれは天啓ではないかと。で、それでまたカバーを外して、折れてなかった右腕のほうのワイヤーも#10に取り替えた。
2号
取り替えてそのままカバーを着せてなかったってこと? 何の意味が?
3号
首は? 首も#12なら、首も替えてしまえば、シンプルに骨格は#10のみになるね。指は除く、だけど。
1号
そう! それだ。シンプル! もちろん取り替えたさ、首の部分も。これでワイヤーが折れても#10のみを買えばいい。というか、頻繁に曲げ伸ばしをすると1年くらいで折れていた腕の寿命も、延びるのではないかと。
2号
ワイヤーが太くなったから?
1号
うん。じっさい#10の脚のワイヤーはまだ折れたことがないんだよね。
2号
なら最初っからぜんぶ#10にしとけばよかったのに。
1号
いやいやいや。#10は硬くて加工が難しいんだ。ワイヤーの切り口は危ないから曲げて輪にするんだけど、たぶん女性の力ではその先端の輪をつくることができなような気がする。だから逆に#12で統一しようかと思っていたくらいなんだ。試しに25号は脚も#12にしている。
3号
#12だとなにか問題あり?
1号
ちょっとやわらかすぎるね。立たせようとすると。でも抱き人形としては問題ない。だから迷ってたんだけど、決めた! ぜんぶ#10にする!
で、もし折れた場合に、オーナーが加工のしやすいのを選ぶのなら、そのとき#12にして取り替えてもらえばいいんだよ。
5号 うさぎ
あーあ。私の25号が負けてしまったか。
6号 アリス
22号だけが特別なんでしょ。
2号
22号以外の腕のワイヤーも#10に取り替えるのかな?
1号
うん。折れたらね。でもまだみんな折れてないし。あと、また、#10にしてなにか不都合がないかとか、まだいろいろ検証するつもり。
——ということで、次回は、ワイヤー骨格のメリットについて語っていこう。
まとめ
今後シメノンドールの骨格代わりのステンレスワイヤーは#10に統一することにする。手足の指は#18のまま。