人形制作会議(第12回)
参加メンバー
6名。
1号
さて、やっと綿詰め作業だな。そのまえに、シメノンドールの肝となる「芯袋」に綿を詰めた状態のものを見せておこう。両端は糸を巻きつけて縛ってあるだけだ。これまたシンプル!
2号
「綿詰め」って単純な作業みたいだけど? なにか特別なものがあるの? たしかまえにちょっとそんなようなこと言ってたし。
1号
うん。じつは大ありだ。
たとえばそう、肘関節や膝関節などの可動する部分はあまり詰めすぎないほうがいい。とくに首のちょっと下の部分。一度詰めすぎて、首を前後に動かしていたら縫い糸が切れてきた。
まあこれは、可動を考えず、ドールを持ち上げるとき首をよく掴むので、何も考えず首全体が硬くなるまで無理やり綿を詰めていたせいだったんだが。
4号
骨格(骨袋、芯袋)を入れた人形袋。左から、1 頭部、2 頸部(首)、3 胴体、4 右腕、5 左腕、6 右脚、7 左脚。
1号
——おっけ。もう少しあいだをおいて撮影すればよかったけど、ま、いいだろう。これらのものに「綿詰め」をしていく。
3号
さっきの話の続きだけど、逆に、もしドールの体をやわらかくしたかったら、あまり綿を詰めないほうがいいってこと?
1号
うん。でも、一概にそうとも言えない。関節部分以外の腕や脚などはきっちり詰めないと、なんか軟体動物のようになる。ま、これは個人の感想だけど。
きほんきっちり詰めたほうが、実際の人間の筋肉質の体のように感じられて、リアルっぽい気がするな。
2号
ふわふわの綿を詰めても女性のようなやわらかい感じにはならないの?
1号
まーそうだね。デフォルメされた動物のぬいぐるみのように、太っているというか、ふくよかならいいんだろうけど、人形袋自体がリアルサイズに近い細さだと、ふわふわの綿とかあまり意味ないね。ま、これも個人の感想だけど。
——じゃ、はい、1日がかりでできたのがコレだ。
3号
首と胴体がつながっているけど? 取り外しはできるんだよね?
1号
あ、うん。これは、綿を詰めた芯袋が鎖骨や肩甲骨の代わりになっているからね。
仕上がりをイメージして綿の詰まった首を挟み込んでから、綿詰めをいくことになるため、取り外せるけど、はめたままで調節して、そのままって状態。
5号 うさぎ
頭もそうだよ。私がやったけど、首に突っ込んだりしながら綿を入れた。
6号 アリス
うさぎちゃんは腕に綿詰めしたらおもしろいって言って遊んでばかりいたけど?
5号 うさぎ
あれは新しい使い方を考えていたんだよ。1号は手だけをつくって売ればいいんじゃない?
1号
手というか腕だろ。ま、オブジェとしておもしろいかもしれないが、需要はないな。すぐに飽きるから。
6号 アリス
だったら、頭の部分だったらいろんな顔がつくれるから、たくさんあってもいいんじゃ?
1号
お、それはあるかもな。試作でつくった頭が複数あるが、まあそれは布カバーを被せる次の段階の話になるな。そういまは「ベースドール」の完成だ。
3号
ベースドール? 新しい呼び名? なにか違う名前で呼んでなかった?
1号
うん。だがしかし。「ベースドール」に統一しようと思う。そしてこのベースドールの完成こそが、われわれ工房の長年の悲願だったのである! ではそれについては、また別の機会に話そう。
まとめ
シメノンドールは、組み立て、解体のできる、解体人形である。